ChatGPTを手掛ける米OpenAI社、取締役会によりサム・アルトマンCEOが解任されました。ChatGPTの開発運用には莫大な資金が必要です。OpenAI社はイーロン・マスク氏が離れた2019年からゴタゴタしながら現在に至っています。
今回の記事では、アルトマンCEOが解任された経緯とOpenAI社の設立から現在までをざっくり分かるように書いています。
OpenAIは特殊な企業構造です。
ぜひ最後まで読んで下さいね!
OpenAI公式ブログにてアルトマン氏退社発表
2023年11月17日 OpenAI公式ブログにて
サム・アルトマンCEOの退社を発表しました。
取締役会の決定なので事実上は解任です。
以下は翻訳文です。
最高技術責任者のミラ・ムラティがOpenAIを率いる暫定CEOに任命。
サム・アルトマンが退社。永続的な後継者を特定するための調査プロセスが進行中です。
引用 OpenAI
OpenAI のすべての活動の統括機関として機能する OpenAI, Inc.の取締役会は本日、Sam Altman が CEO を辞任し、取締役会を離れることを発表しました。同社の最高技術責任者であるミラ・ムラティ氏が即時暫定CEOに就任する。
~中略~
アルトマン氏の辞任は、取締役会による審議プロセスを経たもので、同氏は取締役会とのコミュニケーションにおいて一貫して率直でなく、取締役会の責任を果たす能力に支障をきたしているとの結論に達した。取締役会はもはや、同氏が今後もOpenAIをリードし続ける能力に自信を持っていない。
https://openai.com/
太字部分が解任理由にあたります。
「率直でなく」というのは「正直でない」という意味に近いです。
サム・アルトマン氏のポスト
2023年11月18日
アルトマン氏のXによるポストです。
下記は翻訳文です。
私はopenaiで過ごした時間が大好きでした。それは私個人にとって、そしてできれば世界にとっても少しでも変革をもたらすものでした。何よりも、このような才能のある人々と一緒に仕事をするのが大好きでした。 次のことについては後ほど詳しく説明します。
引用 X
https://twitter.com/
グレッグ・ブロックマン氏のポスト
11月17日に米OpenAI社長を辞任したグレッグ・ブロックマン氏のポストです。
ポストした日は2023年11月18日。
下記は翻訳文です。
読みにくかったので改行だけしました。
サムと私は、理事会が今日行ったことにショックを受け、悲しんでいます。
引用 X
まず、OpenAI で私たちが協力してきた素晴らしい人々、顧客、投資家、そして手を差し伸べてくれたすべての人々に感謝の意を表しましょう。
私たちも、何が起こったのかを正確に把握しようとしているところです。
私たちが知っていることは次のとおりです。
– 昨夜、サムはイリヤから金曜日の正午に話したいというメールを受け取りました。
サムは Google Meet に参加し、グレッグを除く役員全員が参加しました。
イリヤはサムに、自分が解雇されること、そしてそのニュースが間もなく発表されることを告げた。
– 午後 12 時 19 分に、グレッグはイリヤからすぐに電話するよう求めるテキスト メッセージを受け取りました。
午後 12 時 23 分に、イリヤは Google Meet リンクを送信しました。
グレッグは、自分が取締役会から外されることになり(しかし会社にとって重要な人物であり、その役割は留まる)、サムは解雇されたと告げられた。
同じ頃、OpenAI はブログ投稿を公開しました。
– 私たちが知る限り、前夜に知ったミラ以外の経営陣は、直後にこのことを知りました。 溢れんばかりのサポートは本当に素晴らしいものでした。
ありがとう、でも心配するのに時間を費やさないでください。大丈夫です。より素晴らしいものが間もなく登場します。
https://twitter.com/
イリヤ・サツケヴァー氏はチーフサイエンティストで取締役会メンバーです。
今回の解任騒動は、AIの運用において安全性を重視するイリヤ・サツケヴァー氏と、アルトマン氏が衝突したのではと言われています。
暫定CEOはミラ・ムラティ氏
暫定CEOのミラ・ムラティ氏は今回の件についてなにもポストされていません(2023/11/19現在)。

ChatGPTのOpenAI社
ChatGPTにより世界的に有名になったOpenAI社とは、どのような会社のなのか改めてみていきましょう。
営利法人OpenAI LPとその親会社である非営利法人OpenAI Inc. からなるアメリカの人工知能(AI)の開発を行っている企業。対話型生成AIのChatGPTが代表的なサービス。
wiki参照
この親会社である非営利法人OpenAI Inc.というのが、OpenAI社を解明するうえで重要になってきます。
非営利団体とは
営利を目的とせず、社会的な使命(ミッション)を達成するために自主的に活動している民間の組織。
OpenAIは2015年にサム・アルトマン氏とイーロン・マスク氏らによってOpenAI inc.が設立されています。
2018年にマスク氏はOpenAIの買収を提案したが、サム・アルトマンCEO、グレッグ・ブロックマン氏らに拒否され、イーロン・マスク氏が役員を辞任してOpenAIから離れました。
資金面で苦しくなったOpenAIは2019年に同社が営利目的の子会社OpenAI LPを設立します。
OpenAI企業構造
OlenAI社 Corporate structure(企業構造)
画像をタップして拡大できます
引用 OpenAI
https://openai.com/
下記は日本語翻訳です
タップして拡大できます

マイノリティオーナーとは
投資対象となる企業の株式を議決権の過半数を超えない範囲(50%未満)で取得する出資方法のこと
マイクロソフトはOpenAI Global,LLC(利益制限付き会社)に出資しているので、取締役会の決定に直接関与できない構造になっています。
マイクロソフトは1兆円以上を出資しているのにすごい構造ですね。
取締役会メンバー
アルトマン氏が解任される前の取締役会メンバーです。
- グレッグ・ブロックマン(会長兼社長)
- イリヤ・サツケヴァー(チーフサイエンティスト)
- サム・アルトマン(CEO)
- アダム・ディアンジェロ(QuoraのCEO)
- ターシャ・マッコーリー(GeoSim SystemsのCEO)
- Helen Toner(学者)
- 非従業員(株式保有なし)
wiki参照
OpenAI社のビジョン
AGI の将来に対する当社のビジョン
引用 OpenAI
私たちの使命は、汎用人工知能 (一般に人間よりも賢い AI システム) が全人類に利益をもたらすことを保証することです。
私たちは安全で有益な AGI を構築していますが、私たちの仕事が他の人がこの成果を達成するのに役立つ場合、私たちの使命は達成されたとみなします。
https://openai.com/
AGIとは
汎用人工知能
2019年 OpenAI LPはマイクロソフトから出資を受ける
2019年7月にOpenAI LPはマイクロソフトから10億米ドルの出資を受けます。
2022年 ChatGPTを公開
ChatGPTは公開から2カ月で史上最速でアクティブユーザー数が1億人に到達しました。
2023年1月マイクロソフトから100億ドルの出資を受ける
2023年1月マイクロソフトからさらに100億ドルの出資を受けます。(およそ1兆5000億円)
これによりマイクロソフトの株式取得比率は49%となります。
AIは大規模言語が必要なため、巨額の資金が必要となるのです。
2023年9月には評価額860億ドルでベンチャーキャピタルのThrive Capitalに株式売り出しを交渉中と報道がありました。
ソフトバンクGも投資または提携を検討
2023年9月にソフトバンクGも投資または提携を検討という報道がありました。
資金繰りが大変なChatGPT

すでに紹介しているだけでも、莫大な資金が必要でほかにも今回紹介していない出資もあります。これだけ出資しているマイクロソフトでも株式取得比率49%です。
マイクロソフト含むオープンAI株主がアルトマン氏復職を要求
報道によると筆頭株主のマイクロソフトはスライブ・グローバルやタイガー・グローバル・マネジメントを含む一部の投資家と共にアルトマン氏の復職に向け取り組んでいるとのことです。
マイクロソフトに次ぐオープンAI株主であるスライブは、グレッグ・ブロックマン氏の復職にも取り組んでいるようです。
米Microsoftのサティア・ナデラCEOのポスト
2023年11月20日 米Microsoftのサティア・ナデラCEOのポストです。
下記は翻訳文です。
私たちは今後も OpenAI とのパートナーシップに全力を尽くし、製品ロードマップ、Microsoft Ignite で発表したすべてのことを革新し続ける能力、そしてお客様とパートナーの継続的なサポートに自信を持っています。
引用 X
私たちは、Emmett Shear と OAI の新しいリーダーシップ チームを知り、彼らと協力できることを楽しみにしています。
そして、サム アルトマン氏とグレッグ ブロックマン氏が同僚とともにマイクロソフトに加わり、新しい高度な AI 研究チームを率いることになったというニュースを共有できることを非常にうれしく思っています。私たちは、彼らの成功に必要なリソースを提供するために迅速に行動することを楽しみにしています。
https://twitter.com/
太字部分の「サム アルトマン氏とグレッグ ブロックマン氏が同僚とともにマイクロソフトに加わり」ということになりそうです。
復職を求めていたところからの急展開。
公共性か営利目的か

イーロン・マスク氏がいなくなり、OpenAIは2019年に営利目的の子会社OpenAI LPを設立した時点で本来のOpenAIではなくなったのはあきらかです。
OpenAI社のビジョンは「私たちの使命は、汎用人工知能 (一般に人間よりも賢いAI システム) が全人類に利益をもたらすことを保証することです。」
というビジョンですが、営利目的の子会社を設立した時点で、矛盾しているのではないでしょうか?
全人類に利益をもたらすのではなく、OpenAI社に利益をもたらすことに変容しているのではないでしょうか。
まとめ
今後の展開次第でどうなるか分からないですね。ミラ・ムラティ氏は暫定CEOということですが、人選に時間がかかるようなことも言われています。
とあるサイトでは「誰がアルトマン解任のプロンプトを組んだんだ!」などの書き込みがあったりと今回のゴタゴタを楽しんで見ている人もいるようです。
イーロン・マスク氏が関わるXの有料プランで対話AI「Grok」やグーグルの「Bard」や「SGE」などもマイクロソフトにとっては脅威となってくるでしょう。
今後も激しく状況が変わりそうです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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