ChatGPTサービスを展開してきたOpenAI社が崩壊の危機です。
マイクロソフト社のサティア・ナデラCEO兼会長がXのポストにて、サム・アルトマン氏とグレッグ・ブロックマン氏のマイクロソフト社加入を発表しました。
今回の一連の流れをできるだけ分かりやすく説明しています。
前回の記事ではOpenAI社の複雑な企業構造も紹介しています。マイクロソフト社とOpenAI社の関係や、OpenAI非営利団体がOpenAI Global,LLCを所有しているというややこしい構造もできるだけわかりやすく説明しています。
前回の記事↓

OpenAIが崩壊の危機
米OpenAIの取締役会は2023年11月17日解任したサム・アルトマンCEOと復帰を協議中でしたが、アルトマン氏は取締役の辞任とガバナンスの大幅変更を復帰の条件として提示していました。
マイクロソフト社とその他の株主もアルトマン氏の復職を要求していましたが、OpenAI取締役会との協議はまとまらなかったようです。
アルトマン氏はOpenAIを退社する運びとなりました。
マイクロソフト社が事実上の買収か?
MSサティア・ナデラCEO兼会長のポスト
マイクロソフト社のサティア・ナデラCEO兼会長が2023年11月20日にXにてポストしました。
ポスト翻訳
引用 X
私たちは今後も OpenAI とのパートナーシップに全力を尽くし、製品ロードマップ、Microsoft Ignite で発表したすべてのことを革新し続ける能力、そしてお客様とパートナーの継続的なサポートに自信を持っています。私たちは、Emmett Shear と OAI の新しいリーダーシップ チームを知り、彼らと協力できることを楽しみにしています。そして、サム アルトマン氏とグレッグ ブロックマン氏が同僚とともにマイクロソフトに加わり、新しい高度な AI 研究チームを率いることになったというニュースを共有できることを非常にうれしく思っています。私たちは、彼らの成功に必要なリソースを提供するために迅速に行動することを楽しみにしています。
https://twitter.com/
サティア・ナデラCEO兼会長は、サム・アルトマン氏とグレッグ・ブロックマン氏がマイクロソフトに加わるという衝撃的なポストをしました。
OpenAIの新暫定CEOはエメット・シア氏と報道される
Twitch(ツイッチ)のCEOを務めたエメット・シア氏が取締役会の決定によりOpenAIの新たな暫定CEOが誕生と報道されています。
Twitch(ツイッチ)
Amazon.com子会社のTwitch Interactiveが提供するライブストリーミング配信プラットフォーム。
ここでもまだ暫定CEOという言葉を使っているということは、アルトマン氏が退社してからミラ・ムラティ氏が暫定CEOだったわけですが、彼女もOpenAI社から抜けたいと希望している可能性も十分あります。
アルトマン氏のポスト
OpenAI退社後のアルトマン氏のポストを振り返ってみましょう。
ポスト翻訳
引用 X
私はみんなを愛しています。 今日はいろんな意味で奇妙な経験でした。しかし、一つ予想外だったのは、それが生きている間に自分の追悼文を読むようなものだったことだ。溢れ出る愛は素晴らしいです。 1 つのポイント: 友達に自分がどれほど素晴らしいと思うかを伝えに行きましょう。
https://twitter.com/
この友達というのはマイクロソフト関係者でしょうか。
ポスト翻訳
引用 X
私が辞め始めたら、openai 取締役会は私の株の全額を狙って私を追いかけるはずです
https://twitter.com/
アルトマン氏はOpenAI株を保有していないはずですが、自分自身がOpenAIの資産そのものという意味でしょうか。
ポスト翻訳
引用 X
私はopenaiチームがとても大好きです
https://twitter.com/
OpenAIメンバー諸君、君たちもOpenAIを抜けて私についてこい、というメッセージでしょうか?
ポスト翻訳
引用 X
これを着るのは最初で最後
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外部の人間としてOpenAIに来ることはない、という意味でしょう。
ポスト翻訳
引用 X
ミッションは続く
https://twitter.com/
このあとのアルトマン氏のポストは、アルトマン氏後任の暫定CEOだったミラ・ムラティ氏をはじめOpenAIメンバーへ引用リポストです。
ミラ・ムラティ氏のポスト
OpenAI暫定CEOだったミラ・ムラティ氏が今回の騒動後に初のポストをしました。

ミラ・ムラティ氏だけでなく、OpenAIメンバーが続々と「OpenAI is noting without its people」(OpenAIは人材なしには成り立たない)というポストをしています。
「OpenAIは人材なしには成り立たない」というのは、AIを扱う企業の発言として意味深な言葉ですね。
これは言葉通りに受け取ると「人がいないから無理だ」という趣旨なのでしょうか。
アルトマン氏は上記のポストに対して引用リポストしハートマークのコメントをしています。


11月17日に米OpenAI社長を辞任したグレッグ・ブロックマン氏もアルトマン氏と同じようにハートマークをコメントし引用リポストしています。

グレッグ・ブロックマン氏のポスト
2023年11月20日にマイクロソフト社サティア・ナデラCEO兼会長のポストを引用し下記のようにポストしています。
ポスト翻訳
引用 X
私たちは何か新しいものを構築するつもりであり、それは信じられないほど素晴らしいものになるでしょう。
https://twitter.com/
この一連の流れを見ていると、OpenAI暫定CEOでもなくなったミラ・ムラティ氏その他のメンバーもOpenAIから離れそうに見えますね。
「みんなでマイクロソフトに行ってしっかり稼ごうじゃないか!」という流れに見えます。
11月8日ChatGPTが断続的に停止トラブル
今回の騒動前2023年11月8日にChatGPTが断続的に停止していました。
「DDoS攻撃を反映した異常なトラフィックパターンによる定期的な停止に対処している」という発表があり、翌日9日に復旧しました。11月6日にもDALL・Eのエラー率が上昇し、8日にはAPIをダウンさせるChatGPTの大規模な障害も発生していたようです。
ITメディア参照
https://www.itmedia.co.jp/
OpenAI社イリヤ・サツケヴァー氏
OpenAI社の取締役会メンバーでチーフサイエンティストのイリヤ・サツケヴァー氏は、AIの運用において「安全性を重視」すべきという立場だったようです。
今回のChatGPT停止トラブルがきっかけとなり、イリヤ・サツケヴァー氏とアルトマン氏が衝突した可能性が高いのではないでしょうか。
もしくはもともとギクシャクしていたところに、今回の件で激しく衝突したのかもしれません。今回のスピードが早すぎる展開は慢性的な要因により準備をしていて、突発的な要因で行動に踏み切った可能性が高そうですね。
イリヤ・サツケヴァー氏のポスト
ポスト翻訳
引用 X
私は理事会の行動に参加したことを深く後悔しています。 OpenAI に危害を加えるつもりはまったくありませんでした。私たちが一緒に築き上げてきたものすべてが大好きで、会社を再統合するためにできる限りのことをするつもりです。
https://twitter.com/
イリヤ・サツケヴァー氏の「深く後悔しています」というのは不本意な結果となったということでしょう。しかし「OpenAIに危害を加えるつもりはまったくありませんでした」ということは、イリヤ・サツケヴァー氏の言動が今回のアルトマン氏解任劇の大きな要因となったようにも読めます。

アルトマン氏はイリヤ・サツケヴァー氏のポストにもハートマークのコメントをしています。意図がいまいちよく分かりませんね。
まとめ
現時点の「まとめ」になりますが、最終的に誰が利益を得たか、ということを考えるとやはりマイクロソフト社になりそうです。
長期的な安全性
私たちは、AGI を安全にするために必要な研究を行い、AI コミュニティ全体でそのような研究が広く採用されるよう推進することに取り組んでいます。
私たちは、適切な安全対策を講じる時間がないまま、後期段階の AGI 開発が競争の激しいレースになることを懸念しています。したがって、価値観を重視し、安全性を重視したプロジェクトが私たちよりも先に AGI の構築に近づいた場合、私たちは競争をやめ、このプロジェクトの支援を開始することを約束します。詳細についてはケースバイケースの合意で検討することになるが、典型的な発動条件は「今後 2 年間で成功する可能性が偶数よりも高い」ことかもしれない。
引用:OpenAI
https://openai.com/
AGIとは
汎用人工知能
マイクロソフト社は、グーグルやその他AI開発企業と今後も競争していくことは間違いないでしょう。
つまりそれはAI開発における競争を意味します。安全性のストッパーが外れてしまったのではないかと危惧されます。
OpenAI従業員一同が取締役全員の辞任要求
2023年11月20日従業員 700 人中 505 人がOpenAI取締役全員の辞任要求を伝える嘆願書を提出しました。その署名の中にはミラ・ムラティ氏とイリヤ・サツケヴァー氏の名前もあるようです。
セールスフォースのマーク・ベニオフ会長兼CEOのポスト
セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフ会長兼CEOがポストしました。
OpenAIを辞めた研究者には同等の報酬を提供するとして、直ちにセールスフォースで採用するという趣旨のポストです。
翻訳
引用 X
Salesforce は、現金および株式全額を退職届として OTE 提出した OpenAI 研究者をマッチングして、シルビオ・サバレーゼ氏率いる Salesforce Einstein Trusted AI 研究チームに直ちに参加させます。履歴書を ceo@salesforce.com に直接送ってください。 Einstein は、今週 1 兆件の予測および生成トランザクションを完了した最も成功したエンタープライズ AI プラットフォームです。私たちの信頼できる AI エンタープライズ革命に参加してください。
https://twitter.com/
米大手IT関連企業がOpenAIの動向を注視し、好機と判断しすかさずコミットしてきますね。このあたりのスピード感は日本企業も見習いたいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
世界のAI規制状況と日本が危険な状態にあることも踏まえて、生成AIの安全利用について記事を書きました。↓
アルトマン氏OpenAI騒動の真相は?生成AIの安全利用後退か
どうしてこうなった!をざっくり解説しています。下記の記事ではOpenAI社の複雑な企業構造も紹介しています。↓
OpenAI社はアルトマン氏をなぜ解任?営利非営利でゴタゴタか?
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