【AIと絵師の戦い】クリスタに画像生成AIパレット試験実装が炎上!

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NOを持つ人形 なぜ拒絶?

AI導入を試みようとした企業とAI導入を拒絶するユーザーについて整理してみたい。現在AIが様々な分野で実装されようとしている。AI画像生成については明らかに問題が露呈しており、サービスを提供する企業も苦戦が続いている。今回は2022年11月に起こった騒動について検証してみる。

目次

CLIP STUDIO PAINT

CLIP STUDIO PAINT(クリスタ)はCELSYS(セルシス)が開発するペイントソフト、漫画原稿制作ソフト

セルシスが開発提供するCLIP STUDIO PAINT(以下クリスタ)は全体の約80%が日本国外向けに出荷されており、世界各国のクリエイターに利用されているグローバルスタンダードアプリだ。
出荷本数が多いためクリエイターたちからも愛用されていることが分かる。
しかしそんな大人気のクリスタにてある騒動が起こった。
それはStability AI LTDが開発・公開している「Stable Diffusion」を使用して画像生成AIパレットの試験的実装を予定していると発表したことにより騒動は起こった。

試験実装予定を発表

CLIP STUDIO PAINTに「画像生成AIパレット」の試験的実装を予定しています

CLIP STUDIO PAINTサイトより抜粋
2022年11月29日発表

CLIP STUDIO PAINTは、12月6日(火)に公開するVer.1.13.0の無償アップデートで、Stable Diffusionモデルに基づく画像生成AIを導入した「画像生成AIパレット」の試験的な実装を予定しております。この機能は2023年3月に予定しているCLIP STUDIO PAINT Ver.2 に搭載される機能の先行試験実装であり、Ver.2がリリースされた後はVer.1での機能提供は終了予定です。

CLIP STUDIO PAINTは、創作活動をより身近にしたいという考えをもとに、これまでもAIを活用した機能(自動彩色、ポーズスキャナーなど)を提供してきました。同じように、画像生成AIはクリエイターにとって創作活動をより楽しく、より身近にする可能性を秘めていると考えています。

しかし同時に画像生成AIの活用について、クリエイターの皆様より様々な懸念点が挙げられていることも理解しています。社会的コンセンサスの醸成も必要です。そこで、画像生成AIが創作活動とどのように共存できるのか、またセルシスはこの新しい技術にどのようにアプローチしていくべきなのか、ユーザーの皆様が画像生成AIを自由に使える形で提供した上で、ユーザーの皆様とのコミュニケーションを通じて検討を行いたいと考えています。

アップデータの公開にあわせ、匿名でお答えいただけるアンケートを実施し、ご意見をお伺いする予定です。回答方法は改めてご案内させていただきます。アンケートは適宜集計し、結果をまとめたレポートの公開を予定しております。

今回は試験実装であり将来、機能や提供方法などのあらゆることが変更される可能性があります。ユーザーの皆様の声や、アンケートの結果と「画像生成AIパレット」の利用状況をもとに、画像生成AIの創作活動への活用に関する検討をすすめ、ユーザーの皆様により便利に、安心してお使いいただける形での実装を目指してまいります。

これと並行し、アートホスティングサイトとの連携も視野に、作品がアーティスト自身による創作であることを示すための支援機能や、独自のAIモデルの開発など、アーティストのニーズに応える機能を提供していく予定です。

上記の発表によりSNS上ではユーザーたちの批判の声が上がった。

ユーザーから苦情相次ぎ中止

CLIP STUDIO PAINTへ画像生成AI機能を搭載しないことといたしました

2022年12月2日発表

11月29日にお知らせした「画像生成AIパレット」の試験的実装の予定について、皆様にご不安・ご不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ございません。

「画像生成AIパレット」は、皆様に新しい創作の体験をしていただきたい、という想いで開発を進めてきましたが、体験していただく以前に必要な配慮が欠けていました。

セルシスは、画像生成AI技術をどのように創作活動に活用できるかにとらわれ、創作の道具としてCLIP STUDIO PAINTをご利用いただいている皆様の気持ちに寄り添えなかったことを反省し、お詫びいたします。

告知以降、皆様から多くのご意見をいただきました。

  • 現状の方式の画像生成AIが、著作権を侵害していなくとも、誰かの著作物を利用して画像が生成されており、その由来が不明であるアプリは使いたくない。
  • アーティストの為のツールを名乗っているが、画像生成AI機能はむしろアーティストを苦境に追い込み、その活動を阻害する。
  • 倫理的に問題がない方法で収集されたデータを利用していないのであれば、使えない。
  • CLIP STUDIO PAINTを使っただけで、画像生成AIで作ったと疑われてしまう。
  • なぜ要望が多い機能の改善に取り組まずに、問題視されている機能を追加するのか理解できない。
  • 信用できない機能が搭載されている道具は、創作のパートナーとして受け入れられない。
  • 他者の権利が侵害される可能性のある画像が生成され得る機能を提供しておいて、そうならないよう自身で気をつけてほしい、というセルシスのスタンスは無責任だ。

いずれのご意見も重く受け止めており、私達は完全に認識を改めました。

セルシスは今後、このような懸念がある画像生成AIを用いた機能をCLIP STUDIO PAINTに搭載いたしません。また、これからはクリエイターの皆様の意見により真摯に耳を傾け、創作活動に携わる皆さまが安心してご利用いただける機能の提供に全力で努めてまいります。

既存ユーザーたちが拒絶しているのを見てセルシスは路線変更を迫られた。多くのユーザーを失うことを考えると本件の中止はやむを得ない判断だったのだろう。
一方でユーザーの声がしっかり届く企業であることに安堵し「今後もクリスタを愛用させてもいます」というツイートなどもあった。

セルシスのユーザー対応は評価できるものだった。
早期に対応したことと、ユーザーとしっかり向き合っているからだ。
「批判の声もありますが、企業として決定しましたので実装を予定通り~」という展開なら多くのユーザーが離れていっただろう。
またユーザーから愛用されているからこそ強く反発を受けたとも言える。「だったら他のソフトに乗り換えます」と言えるほど多くの選択肢がないからだ。

本件でユーザーが拒絶した最大の要因は上記の意見にある「他者の権利が侵害される可能性のある画像が生成され得る機能を提供しておいて、そうならないよう自身で気をつけてほしい、というセルシスのスタンスは無責任だ。」というところだ。

つまりソフトにAIは導入するが責任はユーザーが取って下さいね、ということだ。
ここがAI導入によってもたらすとくに重要な部分になる。

だれが責任をとるのか?

AI導入により不明確になる責任の所在

AIの導入によって起こるのが不明確な責任の所在なのだ。
AIを利用して作品が完成し販売に至ったとして「その作品は盗作だ」となったときに誰が責任を取るのかという問題。
今後もこの問題はAI導入にあたって至るところで起こると思われる。
また視覚的に分かりやすい画像はすぐにその問題が露呈する。

AIがなくても起こる盗作問題

この盗作問題については、AIが関係していなくても度々起こっている。
AIを導入すると間違いなくこの盗作問題は大量に起こるだろう。また本人が否定した場合は盗作か否かの判断基準も難しくなるだろう。

AIを導入してほしい要望

ではAIを導入してほしいというニーズは、どのようなところにあるのだろうか。クリエイターにも様々いることを整理しておきたい。

想定するクリエイター

  1. オリジナルを追求する者
  2. アニメ・漫画制作のためソフトを使用する者
  3. 収益を得たいので早期にAI導入してほしい者

本件でAI導入を拒否したのは1と2で、3はAI導入を早期に実現してほしいことだろう。ユーザーやクリエイターと言っても、この3者は確実に存在する。「AIと絵師の戦い」と言ってもAIを導入してほしいと考えるユーザーもいるわけだ。

オリジナリティとビジネス

純粋に良い作品を作りたいというクリエイターがいる。
それほど儲けれなくても胸を張ってクリエイターやイラストレーターを名乗りたい人もたくさんいるだろう。
絵は得意ではないが、漫画家や絵師に憧れる人も多い。筆者もその1人で絵の上手い人は尊敬する。
また単純にビジネスとして、ペイントソフトを使いたいと考える人たちがいるのも事実だ。
AIとの共存は今後も多くの企業が模索していくことになり、その都度問題が発生するだろう。画像生成AIについては、その序章のように感じるのだ。

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